みなさんこんにちは、メンタリストのケイです。
私がお子様を持つ女性に催眠をかけた時の話です。その女性とは仕事ではなく、プライベートで知り合ったのですが、彼女は不思議なことに興味があり、私がメンタリズムを演じることを知っていたので是非ともメンタリズムを見てみたいとのことでした。
メンタリズムのショーが始まると彼女は悲鳴を上げるほど驚いたり、本物の超能力なのか?と真顔で質問をしてきたりして、ショーを楽しんでいるようでした。ショーを進行しながら彼女のリアクションを観察していた私は、彼女はきっと催眠にかかりやすいタイプだろうと見当がついていました。
私はショーで最初の段階では誰にでも等しく不思議な現象が起こるメンタリズムを行いながら、お客様のリアクションを観察しておいて、被暗示性の高い(催眠にかかりやすい)タイプのお客様が見つかると催眠のショーに切り替えることが時々あります。
試しに催眠をかけてみると案の定、その女性はとても催眠のかかりが良くて、催眠をかけ始めて10分も経たないうちに、笑いが止まらなくなるような暗示がかかる状態、いわゆる感情支配の段階まで達しました。そして好きな芸能人が見える幻覚暗示などを体験させてからショーは終了しました。
その後、軽い食事を一緒にとりながらお話をしていたのですが、生まれて初めてのメンタリズムや催眠を体験した彼女の興奮はまだおさまっていないようでした。ショーの中で体験したことに対して矢継ぎ早に質問をしてきました。「何故、人の心が読めるのか?」「何故、私の行動を前もって予知できたのか?」「本物の超能力なのか?」など彼女の好奇心は留まることを知りません。そして話はいつしか先ほど体験した催眠に移っていきました。お酒を飲んでいたわけでもなく、もちろんドラッグを飲まされたわけでもないのに笑いが止まらなくなったり、幻覚を見たことが不思議で仕方なかったようですし、理屈が分からないので腑に落ちなかったようです。
そこで私はメモ帳をとりだし、人間の意識の構造を海に浮かぶ氷山に例えて彼女に説明しはじめました。
催眠は被験者の意識をボォ~っとさせて、顕在意識のレベルを低下させてから潜在意識に暗示を放り込む技術だということと、潜在意識に暗示を刷り込まれると人間はそのとおりに行動しやすくなる。と説明しました。
彼女は暗示というものがいまいちまだピンときていなかったようでした。催眠でいう暗示とは、術者が被験者に対してして欲しい行動を被験者の潜在意識に刷り込む文章を指すのですが、彼女は説明を聞いているうちに、顕在意識が弱まっていると潜在意識に暗示が刷り込まれやすくなること、顕在意識が潜在意識に有害な情報が簡単に入ってこないようにガードの役目を果たしているということ、潜在意識に暗示を刻み込まれると暗示の通りに行動しやすくなることを少しずつ理解してきている様子でした。
そして私は彼女がお子さんをお持ちのようなので、「親が子供に対してかける言葉はそのまま暗示文として子供の潜在意識に刻み込まれるんですよ」と言葉をかけました。
彼女は意味が分からなかったようで戸惑ったような顔をしていたので、私は更に説明を続けました。「簡単に言うと子供にあなたは良い子だね!と褒め言葉をかけ続けて育てれば良い子になるし、あなたは悪い子ね!なんでこんな事もできないの!ダメな子ね!とネガティブな言葉をかけ続ければ悪い子に育つということです」
ここまで聞いて彼女はようやく意味が分かり始めたと同時に自分にも思い当たることがあったらしく、ハッとしたような顔をしました。そして私に質問をしてきました。
女性 「ネガティブな言葉をかけ続けると悪い子になるんですか?」
私 「はい。あなたはさっき笑いが止まらなくなるという暗示をかけられて、理由も無いのに笑いが止まらなくなりましたよね。それと同じように悪い子だと言われ続けた子は理由が無くても悪いことをするようになるんです。理由がなくてもイライラして人に暴力をふるったりするようになるんですよ。
子供は顕在意識のガードが脆弱です。だから知らない人に付いて行ってはいけないよ!と普段から教わっていても、お菓子などで釣られると知らない人に付いて行ってしまって誘拐されてしまうことがあるんです。そんな脆弱な顕在意識のガードを最高の親子の信頼関係で結ばれている親の言葉は簡単にすり抜けて、潜在意識に刻み込まれます。
そして、潜在意識がネガティブな言葉でいっぱいになった時に行動となって顕在化するんです。」
女性 「・・・」
つい先ほどまで私の暗示によって、面白くもないのに笑いが止まらなくなって笑い続けたり、幻覚を見ていた彼女は暗示の威力を思い出して、子供に対して安易にネガティブな言葉をかけることの恐ろしさを実感しているようでした。
女性 「でも、さっき先生は私の笑いを止めることもできたし、幻覚から覚まさせてくれましたよね?同じように悪い子になった子供の暗示を解いて、良い子にすることもできますよね?」
いつの間にか私を先生と呼び始めていることに笑いそうになりながら、私は答えました。
私 「さっきのショーのなかでかけた暗示は軽いものです。だから容易に解くこともできますが、残念ながら毎日のように何年にもわたって、かけ続けられた暗示を解くのは容易ではありません。潜在意識に入ったネガティブな暗示を凌駕するほどの量のポジティブな暗示を入れてあげるしかありません。しかし、それには非常に長い時間が必要です」
女性 「ネガティブな言葉をかけられた時間と同じくらい必要だということですね?」
私 「いえ、単純に同じ時間とも言えません。大人になると顕在意識のガードは良い意味でも悪い意味でも強固になってしまいますから」
女性 「良い意味でも悪い意味でも?」
私 「ええ。大きくなると自分に対して有害な情報をシャットアウトすることが出来るようになる反面、良い情報もシャットアウトしてしまうのです。簡単に言うと用心深くなるわけです。例えば、あなたのことを無条件でひたすら褒めまくってくる人が目の前に現れたら、あなたはどう思いますか?」
女性 「そうですね・・・。何か下心でもあるのかな?と思います」
私 「そういうことです。せっかくのポジティブなメッセージでさえも、顕在意識がシャットアウトしてしまい潜在意識に入っていきずらくなるんです。それこそ子供の頃に潜在意識いっぱいに入れられたネガティブな暗示を凌駕するほどの量のポジティブな暗示を入れるのは、バケツの中にいっぱいに入ってる泥水に、毎日,綺麗な澄んだ水を一滴づつ垂らして、バケツの中の泥水を溢れ出させて、澄んだ水にそっくりそのまま交換するような時間のかかる作業です」
女性 「ついストレスから子供に発してしまうネガティブな言葉が、そんなにも子供に大きな影響を与えてしまうんですね・・・」
さっきまでのメンタリズムショーを見終わったばかりの興奮はどこへやら、すっかり彼女は何かに反省しているのか落ち込んでしまっている様子でした。しかし、しばらく考え込んでいた彼女は何かを決断したような表情で前を向き直り、こう言いました。
女性 「今日はとても良い勉強になりました。今日、聞いた話を決して忘れないようにして、これからは子供に接していきたいと思います。こんどは子供たちに不思議なショーを見せてもらえますか?(笑)」
私 「よろこんで(笑)」
すっかり笑顔をとりもどした彼女は、気持ちを新たにして帰っていきました。残念ながらそれから彼女と再会する機会には恵まれていませんが、きっと子供たちに対する姿勢は変わったことでしょう。
育児は大変な作業です。ときにはストレスが溜まって、子供にネガティブな言動をしてしまうこともあると思いますが、その言動がすべて暗示となり子供の潜在意識に刻み込まれ、将来的にはその子の人格形成や将来にまで大きな影響を与えることが分かれば、子供に対する言動には慎重さが求められることが理解できると思います。
お子様をお持ちの方はお気を付けください。